私の作業場、いわゆる工房は山の中にある。
工房のすぐ三方を山に囲まれ、すぐ横に川が流れる、自然豊かな場所。
訪れた人はみな、いい場所ですね、と言ってくれる。
でも。
ここで生活するのは、はっきりいってしんどい。というか怖い。
川の音、虫の声、動物の鳴き声、虫の羽音、風が木を揺する音、雨音。
特に真っ暗な夜に聞くと怖い。
全ての命が、音になって四方から襲いかかってくる感じ。
慣れていない頃は、すぐ顔の横に川の水が押し寄せてきたか、と夜中に発狂しそうになってた。
人間界では、害虫と呼ばれる虫もたくさん来る。
特大の蛇、ネズミ、ムカデ、その他都会生活では見たことない生き物もいっぱい。
春頃から秋にかけて、そういった虫や小動物の生死を毎日目の当たりにしてると、
人間の生死も同じようなもんか、と考えてしまう。
ただ、生まれて死んでいく。それだけ。
自分もいつここで死んでもおかしくないような気がしてくるし、
死んじゃうなら、それはそれでいい。
それは、”人は自然に生かされてる”、というよりも、
”自然はいつでも俺を殺せる”、という感覚。
その感覚が私は、なぜか大好きで、じゃあ頑張って生きてみるか。
少なくとも殺されるまでは、マイペースで生きてみようか、と。
そして、自分は生き物として(人として、ではなく)どう生きて死んでいくのか、
と考えるようになる。
となりの大家さんの飼ってる犬(柴犬)が、その答えを知ってると思うんだな。
奴は知ってる。絶対に。
教えてくれないけど。
